九州新幹線が全線開通したのが2011年3月12日。
もう8年も前のことなんですね。
今日は、そんな九州新幹線を擁するJR九州の中期経営計画をみていきます。
九州旅客鉄道株式会社(通称:JR九州、以下同)は、1987年に日本国有鉄道(国鉄)より鉄道事業を引き継いで発足した旅客鉄道会社のひとつで、九州地方を中心に鉄道路線を有しています。
鉄道事業のほか、“安全とサービス”を基盤にまちをつくる事業開発を展開。さらに、九州各地・沖縄・タイでのホテル事業の展開、農業への参入、シルバー事業や学童保育事業などの分野など、幅広いビジネス展開を行っています。
2018年3月期の業績は、営業収益2,197億円、経常利益522億円です。
近年の経常利益の伸びはすごいですね。
今後もこの成長を続けたいJR九州。
それでは、今後の戦略について、2019年3月19日に発表された『JR九州グループ中期経営計画 2019-2021 ~次の「成長ステージ」に向けて~』をみていきましょう。
2022年3月期の業績目標は、営業収益4,800億円、営業利益570億円です。
2019年3月期と比較すると、営業収益は415億円の増加、営業利益は49億円の減少となります。
九州旅客鉄道株式会社「中期経営計画」P17
上表より、セグメント別の目標をみると、営業収益の増加要因は、「不動産・ホテル(231億円増)」および「流通・外食(100億円増)」となっていることがわかります。
まずは、JR九州を取り巻く経営環境の変化をみていきます。
機会には、「福岡市の人口増加」や「九州への訪日外国人旅行者数の増加」が挙げられています。
特に訪日外国人数は2020年東京オリンピック後も継続した増加が見込まれるようです。
一方、脅威には、「九州の人口減少」や「自然災害の増加」が挙げられています。
自然災害の発生件数が右下にグラフ化されていますが、一貫して増加傾向にあるんですね。
また、機会にも脅威にもなりえる外部環境としては、「不動産市況の変動」「自動運転、AI等の技術革新」「シェアリング経済やMaaS等の新たなビジネスの発生」が挙げらています。
九州旅客鉄道株式会社「中期経営計画」P4
このような経営環境の変化にどのように対応していくのか。
以下では事業ごと戦略を確認していきます。
鉄道サービス
まずは本業の鉄道サービスです。
ポイントとなるのは、「新幹線を活用した物流事業の検討」「九州新幹線西九州ルート(長崎ルート)の開業」辺りでしょうか。
九州旅客鉄道株式会社「中期経営計画」P9
また、「新D&S(デザイン&ストーリー)列車運行を通じた更なる観光資源の発掘」も面白いですね。
JR九州といえばD&S列車というイメージも定着しています。
九州旅客鉄道株式会社 HP
まちづくり
次は駅を拠点としたまちづくりです。
今後も駅周辺のまちづくりを実施。九州全体の活性化を図ります。
九州旅客鉄道株式会社「中期経営計画」P12
また、成長を続ける博多駅周辺では行政・民間が連携し、再開発が続いています。
この「博多コネクテッド」や「博多駅空中都市構想(線路上の活用)」を事業機会と捉え、資産の最大化を図っていく予定です。
九州旅客鉄道株式会社「中期経営計画」P14
さらに、まちづくりとは異なりますが、ホテル事業やマンション事業の展開も積極化。
九州で培った強みを活用し他の都市圏にも進出しています。
東京にホテルで進出することは知っていましたが、海外にまで展開しているんですね。
九州旅客鉄道株式会社「中期経営計画」P18
新たな領域
最後は新たな領域です。
着目すべきは、やはり「新たなモビリティサービス(MaaS)への挑戦」でしょう。
MaaS(マース)とは、Mobility as a Serviceの略で、電車、バス、タクシー、レンタサイクルなどの複数の交通手段について、検索→予約→支払いまで一度に行えるサービスです。
JR九州は、複数の交通手段の中核として、MaaSオペレータとしての地位を狙っています。
これが成功すれば、莫大な収益が望めることは言うまでもありません。
まさにJR九州だからこそできる取り組みといえるでしょう。
九州旅客鉄道株式会社「中期経営計画」P19
JR九州の目指すまちづくりをみていきましょう。
「安全・安心なモビリティサービス」「不動産開発を通じたまちの魅力創造」「事業・イベントを通じた観光・にぎわい創出」という3つの柱の中心にMaaSが置かれています。
九州旅客鉄道株式会社「中期経営計画」P26
3つの柱が既にいずれも盤石なのは間違えありません。
そう考えると、あとはMaaSの成否に中計の達成が掛かっているともいえるのではないでしょうか。