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プリンター販売「消耗品収益モデル」からの転換 ~セイコーエプソン 第2期中期経営計画~

 

皆さん、家でプリンターは使っていますか?

プリンター本体は安いのでついつい買ってしまいますが、結局使わないんですよね。そして、インクがダメになるという…笑

 

今日は、そんなプリンターを製造・販売するセイコーエプソンの中期経営計画をみていきます。

 

 

セイコーエプソンってどんな会社?

 

事業概要

 

セイコーエプソン株式会社は、インクジェットプリンターを始めとするプリンターやプロジェクター、パソコンといった情報関連機器、水晶振動子(クォーツ)、半導体などの電子デバイス部品の製造を行う企業です。

また、インクカートリッジ、トナーカートリッジ、インクジェットプリンター用紙(写真用紙、光沢紙、マット紙など)、リボンカートリッジなどのOAサプライの製造も手掛けています。

 

略称・ブランドは「エプソン(EPSON)」。

家庭向けプリンターでは「Colorio」シリーズが有名ですね。

 

 

業績の長期推移

 

2018年3月期の業績は、売上高1.1兆円、経常利益627億円です。

経常利益の近年の推移をみると、2015年(2015年3月期)をピークに減少傾向となっています。

 

Epson 25 第2期中期経営計画(2019年度~2021年度)

 

さらなる利益を計上していきたいセイコーエプソン。

それでは、今後の戦略について、2019年3月14日に発表された「Epson 25 第2期中期経営計画(2019年度~2021年度)」をみていきましょう。

 

 

2022年の業績目標

 

2022年3月期の業績目標は、売上収益1.2兆円、事業利益960億円です。

2019年3月期見込と比較すると、売上収入が12.1%増、事業利益が47.7%増の目標となっています。

 

セイコーエプソン株式会社「中期経営計画」P45

 

 

 

成長のタネ

 

まずはセイコーエプソンの事業内容を確認します。

 

セグメントをみると、インクジェットプリンターなどのプリンティングソリューションズ事業(7,100億円)、プロジェクターなどのビジュアルコミュニケーション事業(1,980億円)、時計や産業用ロボットなどのウエアラブル・産業プロダクツ事業(1,620億円)の3本の柱から事業が構成されています。


セイコーエプソン株式会社 「Epson 25 第 2 期中期経営計画」(2019 年度~2021 年度)の策定について

 

 

中計には、それぞれの事業について成長戦略が書かれています。

以下では、各事業の成長のタネを探していきます。

 

 

プリンティングソリューション事業

 

セイコーエプソンの主力商品といえば、なんといってもインクジェットプリンターです。

プリンターの市場規模(全世界)をみると、プリンター全体の販売台数は減少傾向。また、インクジェットプリンターの販売台数も減少傾向となっていることがわかります。

市場環境としては厳しい状況が伺えます。

 


セイコーエプソン株式会社「中期経営計画」P55

 

 

このような環境のなか、セイコーエプソンは「オフィスプリンターをレーザープリンターからインクジェットプリンターに置き換える」ことで収益の拡大を狙います。

つまり、マーケットシェアを拡大させるという戦略です。

 

そのための最大の武器は「大容量インクタンクモデル」。

以前は、インクジェットプリンターといえば、本体を格安で販売し、その後のトナー代(消耗品)で稼ぐというビジネスモデルが主流でした。

しかし、現在は大容量インクタンクモデルが主流となっています。

 


セイコーエプソン株式会社 HP

 

 

そこで、セイコーエプソンもビジネスモデルを大転換

大容量インクタンクモデルを武器に、レーザープリンターや従来のインクジェットプリンターからの置き換え市場を狙っていきます。

 


セイコーエプソン株式会社「中期経営計画」P30

 

 

次に、商業・産業印刷の分野もみていきます。

こちらの市場規模は、一貫して拡大傾向であることがわかります。

 

セイコーエプソン株式会社「中期経営計画」P58

 

 

この商業・産業印刷。市場規模は拡大しているものの課題もあります。

それは、「顧客ニーズの多様化」。

顧客ごとにニーズが多様化してしまい、新商品投入が間に合いません。

 

そこで、その解決策として、コア技術であるプリントヘッドを外販し、オープンイノベーションを促進。ニーズへの対応力を強化します。

 

こちらも、なかなか思い切った戦略ですね。

 


セイコーエプソン株式会社「中期経営計画」P35

 

 

 

ビジュアルコミュニケーション事業

 

次に、プロジェクターなどのビジュアルコミュニケーション事業です。

こちらはさらっとみていきましょう。

 

市場規模はこちら。

2020年をピークに縮小傾向に転換するようですね。

 


セイコーエプソン株式会社「中期経営計画」P59

 

 

セイコーエプソンでは、市場に合った商品を展開。

プロジェクターの販売台数を2019年3月期の260万台から2022年3月期には290万台まで微増させる目標です。

 

今後は、小型プロジェクターによる新たな市場が拡大していくみたいですね。

 


セイコーエプソン株式会社「中期経営計画」P17

 

 

 

ウエアラブル・産業プロダクツ事業

 

最後はウエアラブル・産業プロジェクツ事業。

ロボット市場の推移をみると、右肩上がりです。

 


セイコーエプソン株式会社「中期経営計画」P60

 

 

この分野におけるセイコーエプソンの強みは「力覚センサー」と「ビジョンセンサー」。

さらに、2019年2月にはAIベンチャー企業クロスコンパス社と資本業務提携を締結しています。

 


セイコーエプソン株式会社「中期経営計画」P40

 

 

これにより、人との共同作業を前提とした新たなロボットである「ヒト協調ロボット」市場へ参入していきます。

 

この分野が今後、大きく成長することは間違えありません。

楽しみですね。

 

 

さいごに

 

セイコーエプソンは時計の製造でも有名です。

そこで、簡単にこの分野についても確認します。

 

現在、時計市場ではスマートウオッチが伸びています。

そのなかで、セイコーエプソンでは「アナログウオッチ領域に資源を集中」していきます。

 


セイコーエプソン株式会社「中期経営計画」P39

 

 

もちろん、セイコーエプソンでもスマートウオッチに力を入れていました。

しかし、期待通りの成果を挙げられなかったという過去があります。

 

そこで、自社の強みを見直し、今回の戦略に至っています。

とりあえずやってみて、ダメだったら潔く撤退できる。

この柔軟性が何よりの強みといえるのではないでしょうか。