サービス業ってどうしてもスキルが属人的になってしまいますね。
どんなに良いサービスを提供できても、そのスキルが属人的であれば、事業拡大を図ることはできません。
この永遠のテーマ。困っているのは上場企業でも同じようです。
今日は、そんな課題を持つ、青山財産ネットワークスの中期経営計画をみていきます。
株式会社青山財産ネットワークスは、「財産コンサルティング」を行う企業です。
不動産・金融・財務など各分野の専門性を活かし、「個人資産家向けコンサルティング」と「企業オーナー向けコンサルティング」2つのコンサルティングサービスを提供しています。
二代、三代先までを視野に入れた「100年財産コンサルティング」という考えかたのもと、各分野の専門家と連携し、案件ごとに個別対応のコンサルティングを行っているのが特徴です。
株式会社青山財産ネットワークス HPより
またその他にも、不動産取引やサブリース(賃貸物件の運用)なども手掛けています。
2017年12月期の業績は、営業収益145.6億円、経常利益9.4億円です。
近年は、営業収益・経常利益とも増加傾向にあることが読み取れますね。
現在、超高齢化社会への突入により、財産管理のニーズが高まっています。
青山財産ネットワークスにとってもビジネスチャンスという経営環境です。
このビジネスチャンスをどう活かすか。2019年2月5日に発表された「第二次中期経営計画(2019-21年)」をみていきましょう。
2021年12月期の業績目標は、営業利益20億円です。
2018年12月期と比較すると、36.6%増の見込みとなっています。
青山財産ネットワークスは、主に以下の事業を行っています。
(1)財産コンサルティング
個人・法人の財産の承継・運用・管理のコンサルティング
(2)不動産取引
顧客への不動産物件の販売など
(3)サブリース
賃貸物件の運用
各セグメントの収益をみるとこんな感じ。
不動産取引が95億円ともっとも大きく、財産コンサルティングの39億円が続きます。
株式会社青山財産ネットワークス「有価証券報告書(2017年12月期)」
以下では、財産コンサルティング事業にスポットを当てて、成長のタネをみていきましょう。
市場環境は拡大
まずは市場環境です。下図の左上に、青山財産ネットワークスを取り巻く外部環境の記述があります。
近年、ニュースなどで「事業承継の社会問題化」「大相続時代の到来」などのキーワードを目にすることも多いですね。
団塊の世代が70代に入り、事業承継に直面する経営者は多いのですが、なかなか事業承継に着手する経営者は多くありません。国も、色々手を打っていますが追いついていないという状況です。
さらに、外部環境には「金融機関のコンサルティング化」との文言も見えます。
金融機関も、企業にお金を貸し付けるだけではビジネスとして成立しづらくなっていることから、付加価値としてコンサルティングに乗り出しています。青山財産ネットワークスは、以前より金融機関と連携して、コンサルティングを提供しているので、「金融機関のコンサルティング化」はビジネスチャンスにあたります。
総じて、青山財産ネットワークスには追い風の環境変化といえるでしょう。
しかし、コンサルティングで事業拡大は難しい
コンサルティングというのはどうしても、スキルが属人的になってしまいます。
単に物を売れば良いという訳にはいかないので、これは仕方ないですね。
そのため、市場が拡大しているものの、事業をスケールしづらいのです。
そこで、中計では、システム化によりサービスの標準化・効率化を図ることを方針としています。
たしかに、システム化ができれば、ノウハウの標準化が可能です。
中計でも、その効果として、生産性の向上をあげています。
従業員数の伸びに対する顧客数がすごい!
図表の下部には以下の記述があります。
顧客数の急激な拡大に備えるべく、経験の浅いコンサルタントにも標準化されたコンサルティングシステムを活用させることによって、一定品質のコンサルティングサービスが実現できるように務めてまいります。
追い風の経営環境にあるからこそ、積極的なシステム投資で少しでも受注量を増やそうという意気込みがみえますね。
近年、よく問題としてあげられる事業承継問題。
個人的にも、気になっています。
中小企業経営者には、廃業、同族承継、M&Aによる事業譲渡など複数の選択肢がありますが、実際、準備に積極的な経営者は少ない気がします。
この事業承継ニーズに対応するには、第三者の支援が必要だと思われます。
ぜひ、民間の力でこの社会問題を解決に導いてほしいところですね。