政府統計の内容が不適切だったとニュースになっています。
正確性の担保が絶対条件だっただけに衝撃が大きかったですね。
機械も同様です。計測機器の結果に正確性がなければ、不良品が出荷される恐れがあります。
本日は、そんな計測機器を製造している小野測器の中期経営計画をみていきます。
株式会社小野測器は、電気計測機器、電気応用機器、電気制御装置の製造、販売を行う企業です。
デジタル計測機器の大手であり、回転計、音響・振動計では業界トップを誇ります。
センシング、計測、制御、データ処理、精密機構の各技術と、それらを融合したトータル技術で生産現場のニーズに応える様々なソリューション展開を進めています。
2017年12月期の業績は、売上高120.8億円、経常利益2.1億円です。
経常利益が年々減少しており、厳しい経営状況が伺えます。
余談ですが……リーマン・ショックってすごいですね。売上高が半分に落ち込んでいます。
比較的、景気に左右されやすい業態なのかもしれません。
それでは、今後の戦略について、2019年1月29日に発表された中期経営計画「Challenge StageⅡ」をみていきましょう。
なお、副題(キャッチコピー)となっている「Challenge StageⅡ」は、以下の長期経営戦略上の位置づけとなっています。
株式会社小野測器「中期経営計画」
2021年12月期の業績目標は、売上高160億円、営業利益16億円です。
2018年12月期実績と比較して、売上高10.8%増、営業利益66.3%増の計画となっています。
株式会社小野測器「中期経営計画」より筆者作成
中計には、小野測器を取り巻く外部環境が書かれています。
当社グループを取り巻く事業環境は、主要顧客であります自動車業界におけるCASEやMaaSに代表される大きな変革の時代を迎え、これまでにない速さでめまぐるしく変化しております。
CASE(ケース)とは、Connected(ネットワークに繋がる)、Autonomous(自動運転)、Shared&Services(カーシェアリング)、Electric(電気自動車) の頭文字から作られた造語です。また、MaaS(Mobility as a Service:マース)とは、サービスとして移動を提供するという考え方です。
平成28年12月期の小野測器の主要取引先をみるとこんな感じ。
現在は、ホンダやトヨタなどとの取引が多いですが、今後は電気自動車の新たなプレイヤーが参入してくる可能性もありますね。
小野測器も、この自動車業界の変革に合わせ、自社の製品やサービスを変革させていかなければなりません。
それでは、具体的な変革内容をみていきましょう。
海外展開
小野測器の現在の海外売上高比率は15.9%。これを2021年度には25.0%にまで拡大させます。
具体的にはアジア地域の成長を見込んでいるようです。
グローバル市場への拡販
現在の主力である国内販売に加え、アジア地域を中心とした成長性が高いグローバル市場での拡販のため、現地への支援体制の構築や、人事施策(採用、教育)等を推進してまいります。
新市場進出
中計には新市場進出について以下のように書かれています。
新市場進出への取組み
将来ありたい姿を実現するため、新たな柱の確立を目指してまいります。現在の事業の柱である音響振動分野、自動車試験機分野に加えて、既存技術の展開が可能な市場の開拓、および新しい技術を活用した商品の素早い展開による有望分野への進出を推進してまいります。
具体的にどの分野に進出するのかについての記載がないため詳しくはわかりませんが、小野測器の技術を活用できる分野は多々あるでしょう。
前述した電気自動車の普及においては、今までにない新規プレイヤーの参入も見込めるでしょう。
ただし、これらの新規プレイヤーが計測機器などを一から揃えるのは大変です。
そこで、小野測器では、計測の受託事業も行っています。
一般的には、機器販売メーカーが受託サービスを提供するかどうかは経営判断に迷うところです。
受託してしまったら、計測機器の販売とカニバってしまう可能性があるためです。
しかし、小野測器は受託サービスを実施。
経営理念の「先義後利」を体現した戦略と言えるのではないでしょうか。このような経営理念に基づいた経営判断ができると、事業内容に一貫性がでてきますね!
※先義後利:道義を優先させ、利益を後回しにすること。