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3年間累計4,000億円の投資で個性派事業を生み出す ~昭和電工 中期経営計画 “The Top 2021” -こころと社会を”動かす”企業-~

 

先日、中学校時代の友人8人と会ったら、半数の4人が『Pokemon GO』をやっていました。皆、一度は辞めたものの、最近リスタートしたそうです(私もリスタート組のひとりです)。

半数って結構すごいですね。スマホゲーム業界でもこの復帰率は異例ではないでしょうか。

 

さて、今日は昭和電工の中期経営計画をみていきます。

 

 

昭和電工ってどんな会社?

事業概要

昭和電工株式会社は、総合化学工業を手掛ける大手企業です。主な事業内容は、以下5つのセグメントに分けられます。

・エチレン・プロピレンなどの石油化学基礎製品を提供する「石油化学セグメント」

・産業用ガスや工業薬品といった化学品を提供する「化学品セグメント」

・セラミックス製品やカーボン製品を提供する「無機セグメント」

・アルミニウム材料や高付加価値加工品を生産する「アルミニウムセグメント」

・ハードディスク事業、LED、化合物半導体などを手掛ける「エレクトロニクスセグメント」

 

昨今では、電子・情報材料など高収益の事業に注力する事業再構築で「脱総合化」を図り、「個性派化学」を目指しています。

 

 

 

業績の長期推移

2017年12月期の業績は、売上高7,804億円、経常利益640億円です。

売上推移は横ばいですが、経常利益がここ数年、急増していることがわかります。

 

中期経営計画 “The Top 2021” -こころと社会を”動かす”企業-

 

それでは、今後の戦略について、2018年12月11日に発表された「中期経営計画 “The Top 2021” -こころと社会を”動かす”企業-」をみていきましょう。

 

2019~2021年の業績目標

201912月期~2021年12月期の業績目標は、累計売上高3.4兆円、累計営業利益4,800億円です(単年度の業績目標はありません)。

 

昭和電工株式会社「中期経営計画」より筆者作成

 

 

目指す姿

まずは、昭和電工が目指す姿をみていきましょう。

昭和電工は「個性派企業」をビジョンに掲げています。「個性派企業」とは、各市場でトップシェアとなる事業(個性派事業)の連合体のこと。2025年には半数以上を個性派事業にすることを目指していきます。

 

昭和電工株式会社「中期経営計画」P9

 

 

現在、「HD」「電子材料用高純度ガス」「黒鉛電極(UHP)」が既に個性派事業となっています。今後、これらに続く個性派事業を生み出すためには、投資を実施していきます。投資額は合計4,000億円。現在の事業基盤を強化するための改善投資、パワー半導体SiC、積層セラミックコンデンサ(MLCC)、先端電池などの分野への成長投資に加え、M&Aなども積極的に行って行くようです。

 

昭和電工株式会社「中期経営計画」P14

 

 

また、事業間の連携も強化。これにより、コングロマリット・プレミアムを目指していきます。

事業を多角化すると、経営資源が分散化してしまい、どうしてもコングロマリット・ディスカウントが起こります。そこで、事業間連携を強化することで、事業間のシナジーを生み出していくとのことです。

具体例のひとつが、事業間連携による開発プロジェクト。アルミ技術をコアに、有機、無機の素材技術を組み合わせ、EV車用の素材を開発してきます。

 

昭和電工株式会社「中期経営計画」P23

 

 

成長のタネ

昭和電工では、事業を「収益率を高める事業」「売上を伸ばす事業」「ビジネスモデルを変える事業」の3つに分類。それぞれのポートフォリオに適した投資を行っていきます。

 

昭和電工株式会社「中期経営計画」P11

 

 

ここでは、成長のタネとして「売上を伸ばす事業」のなかから、「情報電子化学品(電子材料用高純度ガス)」および「パワー半導体SiC」をみていきましょう。

 

昭和電工株式会社「中期経営計画」P20

 

 

情報電子化学品(電子材料用高純度ガス)

電子材料用高純度ガスとは、半導体や液晶パネル、LED、太陽電池などを作る過程で使用されるガスです。昭和電工では、アンモニア、塩素、フッ素系ガスなど、20種類以上の高純度ガスを製造しています。

 

昭和電工株式会社 HP

 

 

電子材料用高純度ガスが使用される半導体市場の推移をみると、2025年までは7%の伸びが予測されています。このことから、電子材料用高純度ガスの市場予測をCAGR(年平均成長率)10%以上と見込んでいます。

 

昭和電工株式会社「中期経営計画」P40

 

 

パワー半導体SiC

昭和電工で製造しているSiCエピタキシャルウェハーは、次世代のパワー半導体に使用される材料です。SiCを用いたパワー半導体は従来のSi半導体に比べて優れた特性を持ち、パワーモジュールの小型化と高効率化を実現しています。

 

昭和電工株式会社 HP

 

 

SiC市場の推移をみると、2025年まで39%の伸びが予測されています。

結構良い成長率を示していますね。

 

昭和電工株式会社「中期経営計画」P39

 

 

 

現在、昭和電工は利益を「黒鉛電極(UHP)」で稼いでいます。

「黒鉛電極(UHP)」を含む、無機の営業利益は全社の4割にまでのぼっているようです。

こうみると、たしかに、他の個性派事業育成は急務といえそうですね。

 

 

さいごに

 

本日は、昭和電工の中期経営計画をみていきました。

この中計。まさに、中計のお手本のような計画書ですね。実際、市場からも好感を受けているようで、発表翌日(本日)の株価は8.32%上昇しています。

 

特に個人的に好きなのは、PPM理論を使いつつ、理論内で一般的に使用される用語を「高める」「伸ばす」「変わる」のように自分らしい用語に変換している点です。

 

昭和電工って、製造だけでなく、実は経営管理が強い会社なのかなと感じました。

ぜひ、勉強資料としても使ってみてください!