昨晩から、新聞記事は日産自動車一色ですね。
ゴーン会長の不正支出とのことですが、監査法人は気づかなかったのでしょうか…
日産自動車株式会社は、トヨタ自動車に次いで国内登録者台数(2017年度)第2位を誇る大手自動車メーカーです。
海外では特にSUVと小型車に強みを持ち、2010暦年のグローバル販売台数及び、グローバル生産台数は共に400万台を超えています。
国外では高級車の「インフィニティ」ブランドおよび新興国向けの低価格車ブランド「ダットサン」での展開も行っている他、フランスの自動車メーカーであるルノーの車種を「日産」ブランドで販売しています。
昨日11月19日、有価証券報告書の虚偽記載で逮捕された代表取締役会長のカルロス・ゴーン氏は、1999年、経営危機に陥っていた日産自動車にルノーから派遣。日産、ルノー、三菱自動車の日仏自動車大手3社で会長を務め経営を束ねてきました。経営を再建した剛腕っぷりだけでなく、自ら出演するCMやメディアへの露出など、そのカリスマ性も話題を呼んでいます。
2018年3月期の業績は、売上高12.0兆円、経常利益0.8兆円です。
売上推移をみると、リーマン・ショック以降、増加傾向となっています。
それでは、今後の戦略について、2017年11月8日に発表された「中期計画」をみていきます。
2022年3月期の業績目標は、売上高16.5兆円、営業利益1.3兆円(営業利益率8%)です。
2016年3月期と比較して、売上高35%、営業利益44%増を目指しています。
日産自動車株式会社「中期計画」より筆者作成
日産自動車の「中期計画 日産M.O.V.E to 2022」の内容は以下のとおり。パワーポイント4枚で構成されています(これですべてです)。
とてもシンプルな中身ですね。
日産自動車株式会社「中期計画」
この日産自動車の計画。実は、本計画はルノー、日産自動車、三菱自動車の3社連合の新6か年計画(以下、「アライアンス2022」)に基づいています。
アライアンス2022 HP
「アライアンス2022」では以下の目標達成を目指しています。
・4つの共通プラットフォームにより、900万台以上をカバー
・共通パワートレインの比率を全販売台数の3分の1から4分の3に上昇
・電動化、自動運転、コネクテッド技術の共有により、さらなるシナジーを創出
・電気自動車(EV)用の共通プラットフォームおよび共用部品を活用し、100%EVを新たに12車種投入
・自動運転(AD)技術を40車種に搭載
・無人運転車両による配車サービス事業への参画
ざっくりいうと、3社連合のシナジーを発揮させコストダウンを図るとともに、EV車、自動運転、配車サービス事業で市場を開拓していくといった内容でしょうか。
成長のタネでは、「EV車市場でのシェア獲得」および「自動運転車両および無人運転車両の提供」の2点を取り上げます。
1.EV車市場でのシェア獲得
EV車市場の拡大は言うまでもありません。ルノーのお膝元、フランスでは「2040年までに二酸化炭素の排出削減のため、ガソリン車およびディーゼル車の販売を禁止する」と発表しています。
この流れを受け、3社連合では以下のスケジュールでEV車を開発していきます。
バッテリーコスト30%削減などがポイントになるでしょうか。
2020年までに、複数のセグメントに展開可能なEV専用の共通プラットフォームを実用化。2022年までにはEVの70%が共有プラットフォームベースに
2020年までに、新たなEVモーターおよびバッテリーを投入し、アライアンスで共有
2022年までに、100%EVを12車種発売
2022年までに、EVの航続距離600kmを達成(NEDCモード)
2022年までに、バッテリーコストを30%削減(2016年比)
2022年までに、15分の急速充電で走行可能な距離を2016年の90kmから230kmに拡大(NEDCモード)
最適化されたフラットなバッテリーパッケージで室内空間を拡大し、柔軟なスタイリングを可能に
2022年までに、アライアンス共通のC/DセグメントのPHEVソリューションとして、三菱自動車の新しいPHEV技術を採用
2.自動運転車両および無人運転車両の提供
もうひとつの目標が、自動運転・無人運転です。2022年には完全自動運転を実現させるとのこと。とても楽しみな流れですね。
2018年:高速道路高度自動運転車両(ドライバーは常に周囲を監視する必要あり)
2020年:市街地高度自動運転車両(ドライバーは常に周囲を監視する必要あり)
2020年:高速道路高度自動運転車両(ドライバーは必要に応じて運転に関与)
2022年:初の完全自動運転車両(ドライバーの運転への関与は不要)
将来的には無人運転車両の配車サービス事業に参画していく方向のようです。2018年4月に発表された『滴滴出行(ディディチューシン)が設立した「DiDi Auto Alliance 」にパートナーの1社として参加』もこの目標達成を受けてのことでしょう。
自動車を取り巻く環境は本当に大きく変化しているのはご存知のとおり。トヨタ自動車の豊田社長も「100年に一度の大変革期」と表現しています。
自動車メーカーは、この変化に対応していかなれればなりません。
3社連合の牽引役はやはりゴーン会長。
船頭なき計画が実現されるのか、今後注目していきたいところですね。