経営の真髄は経営計画にあり!経営計画を通じて経営を学ぶメディア 主に経営者、経営企画担当者向け

新たな稼ぎ頭は見つけられるのか? ~東芝Nextプラン 2019-23年度事業計画~

 

いよいよ、待ちに待った東芝の中期経営計画が発表されましたね。今まで稼ぎ頭だった東芝メモリを売却した後、どのような事業で収益をあげていくのかが着目されていました。

早速、東芝の中期経営計画をみていきましょう。

 

東芝ってどんな会社?

事業概要

株式会社東芝は電機メーカーです。製品の製造からサービスに至るまでの間に、多岐にわたる子会社や関連会社を展開する、東芝グループと中核となる大手企業です。

かつては冷蔵庫・洗濯機・電子レンジや炊飯器といった白物家電事業のパイオニアでしたが、2015年に発覚した粉飾決算事件をきっかけに2016年に一部株を売却し撤退。医療機器事業や半導体メモリ、テレビ・パソコン事業も次々に売却しました。

詳しい事業内容は以下の記事もご覧ください。

利益97%減からの再出発! 経営計画にみる新生東芝の事業モデルとは?

 

業績の推移

2018年3月期の業績は、売上高3.9兆円、当期純利益0.8兆円です。東芝メモリの売却益によって一時的に利益がプラスになっています。

ただし、売上高は減少傾向が続いており、厳しい状況が伺えます。

中期経営計画「東芝Nextプラン」

 

日本を代表する企業である東芝。その大企業であっても、市場の変化に対応してビジネスモデルを変え続けなければ成長はできません。たとえば、昔の東芝といえば「白物家電メーカー」といったイメージが強くありました。それが、今では「白物家電」事業を中国に美的集団に売却しています。同様に、成長市場として捉えていた「原発事業」からも撤退しました。

今後どのような分野で稼いでいくのでしょうか?

 

2023年の業績ターゲット

2023年3月期の業績目標は、売上高4.0兆円、営業利益利益率8.0~10%です。

営業利益率8.0~10%とはなかなか思い切った目標設定ですね。

 

株式会社東芝「東芝Nextプラン」より筆者作成

 

成長のタネ

中期経営計画では、東芝が既に保有する事業分野のなかで成長市場に位置づけられる分野へ集中投資を行うことで、今後の成長を図っていくとしています。成長市場は下図右側です。

 

株式会社東芝「東芝Nextプラン」P26

 

成長市場の市場規模をみると、「リチウムイオン電池市場」が2017年の4兆円から2030年には30兆円、「再生・細胞医療市場」は0兆円→15兆円、「AI市場」は1兆円→20兆円、「鉄道・物流市場」は20兆円→30兆円、「ビル・ソリューション市場」は25兆円→45兆円に伸びるようです。

 

株式会社東芝「東芝Nextプラン」P41

 

ここでは、東芝が特に注力する分野をみていきましょう。
東芝は、「デジタル社会を支えるキーコンポーネントは電池と半導体である」と考えています。

 

まずは、電池です。リチウムイオン二次電池(充電式電池)の市場拡大はご存知のとおり。スマホやノートPCのバッテリーだけでなく、近年は車までも二次電池で動く時代です。パナソニックがテスラモーター社に二次電池を供給していますね。東芝でも、車載用や産業用(鉄道、AVG)用の二次電池を注力領域としています。

 

株式会社東芝「東芝Nextプラン」P42

 

次に、パワーデバイスです。電気産業機器分野、鉄道、車載、ビルソリューションなどの分野において、エネルギー効率の改善は永遠のテーマです。東芝では半導体技術をコアに、電気エネルギー制御に欠かせないパワーデバイスを開発・販売しています。

 

株式会社東芝「東芝Nextプラン」P43

 

設備投資および研究開発投資もこれらの分野に重点的に行います。グラフをみても、「インフラシステム(二次電池等)」と「ストレージ&デバイス(パワーデバイスなど)」への投資額が特に多くなっています。

 

株式会社東芝「東芝Nextプラン」P22、P23

 

 

さいごに

 

東芝の中期経営計画をみると、「新たな事業分野に参入する」というよりも、「既に保有する事業分野のなかで成長市場に位置づけられる分野へ集中投資を行う」という内容でした。

また、今後の成長戦略のなかでは、M&Aで技術を取り入れるというよりも、あくまでもオーガニックな成長投資に重点を置くとしてます。今どきの経営計画では珍しいですね。

 

現在の技術にどれだけ進化させられるか、その結果が中期経営計画の成否を分けるのではないでしょうか。