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利益97%減からの再出発! 経営計画にみる新生東芝の事業モデルとは?

 

 

切り刻まれる東芝

 

度重なる不正会計に、原子力事業の巨額赤字。

 

かつて「世界初」を連発し、理系学生にとって憧れの的であった名門企業 東芝の落日の模様が連日報じられています。

 

2017年11月には、東芝の顔とも言えるテレビ事業を中国海信集団(ハイセンス)へ売却。今後REGZAブランドは日本企業のものではなくなってしまいました。

 

そして「サザエさん」のスポンサーからの降板。東芝は一般消費者との接点を多く失っていきます。

 

そうした中でもっとも東芝の経営においてインパクトがあり、昨年多くの耳目を集めたのが、メモリ事業の売却でしょう。

 

出典:株式会社 東芝「2017年度第3四半期決算

 

2017年度の東芝全体の営業利益の見込みが4,300億円に対し、メモリ事業だけの営業利益がなんと4,200億円。なんと利益の97.7%を稼ぐ事業が売却されてしまうのです。

 

さらに東芝がメモリ事業を売却した後、売上高は4兆9,000億円から3兆9,000億円と、1兆円も減少してしまいます。

 

その残った3兆9,000億円の内訳は下記のようなものになります。

 

 

残された東芝の未来を支える事業たち。その実態とはどのようなものなのでしょうか?

 

世界的なトレンドは厳し目? エネルギーソリューション事業

 

エネルギーソリューション部門は、主に原子力、火力、送変電・配線といったエネルギー事業を扱っています。

 

こちらの事業はかつて原子力事業を中心として、稼ぎ頭となることが期待されていた部署でした。

 

しかし、かつて買収したアメリカのウエスチングハウス社で巨額の赤字が発覚し、これを売却。そして東日本大震災以降の原子力エネルギーへの逆風から、大きな成長は見込めなくなってしまったのです。

 

 

現在、火力、水力発電において、海外を中心に受注を増やそうとしていますが、中国や韓国の企業との価格競争が激化しています。

 

 

最大規模を誇るインフラシステムソリューション事業

 

こちらの事業では公共インフラ、ビル・施設設備、産業システムといった社会基盤の構築を事業として展開しています。

 

新生東芝内では1兆2,000億円と最大規模を誇る事業で、全社の核となることが期待されています。

 

ベトナム、インドといった新興国を中心に高速道路システムやオフィスエレベーターといったインフラを供給しており、新興国の経済成長にうまく乗ることができれば、成長の牽引役としての役割も期待できます。

 

また、注目すべきは自働荷降ろしロボットの開発でしょう。アマゾンやアリババといったオンライン通販の拡大、そして労働力不足、賃上げが顕在化するなか、大型物流センター向けのロボットの需要は大きく拡大することが予想できます。

 

 

 

自動運転に活路を ストレージ&デバイスソリューション事業

 

メモリ事業も含まれていたこの事業でしたが、メモリ事業無き後にはHDD(ハードディスク)ビジネスが重点事業となります。しかし大容量記憶媒体の主流はHDDからSSD(メモリ)へと移っており、大きな成長は望めないでしょう。

 

一方、ストレージ&デバイスソリューション事業では画像認識システム向けのAIの開発をデンソーと共同で行っています。来たる自動運転というパラダイム・シフトでは、既存の産業構造は崩れ去り、新たに巨大な市場が登場すると言われています。

 

 

そこへ食い込むことができれば、大きなチャンスとなるのではないでしょうか。

 

 

時代の最先端 インダストリアルICTソリューション事業

 

この事業が全社の売上に占める割合は、わずか5%、2,500億円に過ぎません。しかしここではIoTやAIといった次世代技術を中心にビジネスを進めています。

 

IoT事業においては、大規模工場の生産性向上のための技術を開発しており、既にデンソーにも採用されています。この分野ではアメリカのGEといった強力な競争相手も存在しますが、大きな成長の可能性がある市場であるといえるでしょう。

 

 

 

焼け野原からの再出発となる東芝

 

不正会計、史上最大の大型赤字といった荒波をなんとか乗り越え、生き残ることができた東芝。かつての輝きは既になく、まさに焼け跡からイチからの出発と言えるでしょう。

 

しかしこれで膿を出し切り、次の成長フェーズへ本来のポテンシャルを発揮できれば、再生の芽は必ずあると考えられます。

 

戦後文字通り焼け野原から、日本を再び世界に冠たる経済大国へ導いた歴史もあるのが東芝という会社です。

 

その闊達で新たなことに挑戦するDNAが、再び東芝を一流企業へと押し上げる、その挑戦を見守りたいですね。