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中小企業のための人材確保・人材育成対策4選

 

「有効求人倍率がバブル期並みの高水準に」「人手不足が深刻化」というニュースを目にすることが増えました。この背景には少子化や、団塊世代の定年退職による労働人口の減少があります。

今年1月に帝国データバンクが行った「人手不足に対する企業の見解の調査」「TDB景気動向調査2018年1月調査」では、正社員が「不足している」と回答した企業が5割を超える結果となりました。3か月前の調査から2ポイント、1年前と比べると7.2ポイントも増えており、今後ますます人手不足が深刻化していくことが予想されます。

このような状況のなかで、いかにして人材を確保・育成していくかが、経営上の大きな課題となっています。

 

 

中小企業こそ、人材確保・育成に力を入れるべき

 

人手不足を解消するためには、当然ですが新たな人材を確保する必要があります。ところが前述したとおり、労働人口自体が減少しているため、そう簡単に人材確保ができる状況ではありません。

求職者が集まりやすい大企業と異なり、中小企業はヒト・モノ・カネが不足しがちです。ただ漠然と求人広告を掲載しているだけでは、適任な人材はやってこないでしょう。

限られた経営資源の中で、いかにして効率よく人材確保・育成をしていくかを考え実行していくことが必要であるといえます。

 

中小企業のための人材確保・育成対策① 魅力を効果的に発信

 

求職者・転職希望者が求めているものを知り、効果的な求人広告や情報発信を行いましょう。

公益財団法人 日本生産性本部『平成 29 年度 新入社員「働くことの意識」調査結果』によると、新入社員が入社する会社を選択する理由は「自分の能力・個性が生かせるから」であり、仕事をする目的としては「楽しい生活をしたい」との回答が多くなっています。

 

つまり、自身の個性を発揮しながら働きやすい環境でのキャリア形成を望んでいることがわかります。待遇面では大企業には勝てなくても、将来性ややりがいなどは中小企業でも十分に対抗できます。また、従業員の個性・適性を汲み取り、それを活かせる業務を任せていくことができるのは、中小企業ならではの強みともいえるでしょう。

 

魅力ある企業であれば、規模に関係なく求職者・転職者から注目を集めることができます。

まずは自社の魅力や強み・これからのビジョンを明確に洗い出しましょう。

求職者・転職者は転職にあたり企業のホームページを閲覧したり、インターネットでの口コミを調べたりもしています。それらの媒体を活用して、求職者の目に留まるような情報発信を行いましょう。

 

中小企業のための人材確保・育成対策② 女性や高齢者など、新たな労働力の掘り起こし

 

多くの企業は人手不足の対応策として、女性や高齢者の活用を促進しています。子育てがひと段落した女性や、定年退職後の高齢者を「単なる人材」としてではなく「ノウハウを持った/即戦力となる貴重な人材」という視点で活用していくことは、人材不足解消のための有効な一手といえます。

女性活用のための取組みで、中小企業に不足しがちな点は、①育児休業・休暇制度、②結婚・出産を機に退職した人の再雇用、③勤務時間の短縮(時短勤務制度)、④子どもの送迎などのための早退・遅刻などの許可 が挙げられます。

 

一般的に、中小企業は人材育成にコストをかけることが難しいといわれています。女性や高齢者を再雇用することは、すなわち即戦力の確保にもなりえます。女性や高齢者が活躍しやすい環境づくりを、できることから始めていきたいですね。

 

中小企業のための人材確保・育成対策③ 業務の効率化・自動化

 

労働力の不足を補うため、業務の効率化や自動化などに投資することも一つの手です。生産性が上がると、たとえば今まで3人がかりで行っていた業務を2人でできるようになり、人材を増やさなくても業務に支障が出なくなる、といったことが実現します。

また、今いる人材の能力を伸ばし最大限に活用するため、OJT(On-the-Job Training、オン・ザ・ジョブ・トレーニング)で、業務を通して人材の育成に取り掛かることも必要だといえます。実務を通して、指導する側もされる側も職務能力を高められるため、研修にコストをかけられない中小企業に適した育成方法です。

 

中小企業のための人材確保・育成対策④ 助成金を賢く活用

 

人材の確保とともに、育成も大事なポイントです。しかし、③で述べたように、中小企業は研修や人材育成になかなかコストをかけられず、OJTだけでは補いきれない部分もあります。

厚生労働省が行っている「人材開発支援助成金」は、こうした人材育成に必要な経費や賃金の一部を補助する助成する制度です。

バイトやパートなどの非正規採用の人材を育成して正社員に登用したい場合や、トライアル雇用中の教育、賃金アップなどの労働条件改善の資金としても活用できます。実際の業務に携わる前にしっかりと研修を受けることで労働者側の意識も高まり、結果として技能を持った人材が長く働いてくれるというメリットも享受できるといえます。

 

 

人材不足と嘆く前に

 

仕事はあるものの人手不足がゆえに経営の先行きが立たず、「人手不足倒産」といわれ、事業継続を断念する中小企業も後を絶ちません。今後、この状況はさらに加速していくことは想像に難くありません。

企業は存続しているからこそ、存在価値が出てきます。不足が生じて仕事が回らなくなってしまう前に、自社の経営状況や見通しをしっかりと見据え、将来のための人材確保・育成の計画を立てていくことが急務です。5年先を目安にして、今後の方策を事業計画に反映させていくことをおすすめします。