皆さまは、自社を取り巻く世界情勢や政治情勢など、どのように情報収集をしていますか?
多くの方は、新聞やニュースで情報を仕入れているのではないでしょうか。ただし、そうした情報をしっかりと整理し、経営に役立てている方は、実際はあまり多くありません。
情報の整理はどうやればいいのかわからない……そんな声が聞こえそうですね。
そんなときに役立つのが、「PEST分析」と呼ばれる手法です。
今回はそのPEST分析の内容とその活用方法について解説していきます。
PEST分析とは、自社経営を取り巻く外部環境の要素を以下の4つの要素に分類する分析方法です。
P=Politics(政治)
E= Economy(経済)
S=Society(社会)
T=Technology(技術)
たとえば「中国観光客へのビザが緩和された」というニュースをみたときは、Politics(政治)の分野で自社の事業活動に影響がある、と情報を整理します。
また、「中国人観光客の消費活動が「爆買い」と呼ばれる家電や化粧品の大量購入から、日本文化や食といった「体験」に移りつつある」という新聞の記事を読んだとすれば、Society(社会)での変化が起こりつつある、と整理できるでしょう。
このようにしてPEST分析を活用することで、自社経営に影響を及ぼす外部環境について網羅的に整理ができるのです。
今回は、実際にとあるリサーチ会社が実際に行ったPEST分析を参考にしながら、PEST分析の方法をみていきます。
下図は、リサーチ・コンサルティング会社が、ホテル再生にあたり、実際にPEST分析を活用した事例です。「P」「E」「S」「T」の各視点でしっかり情報が整理できていることがわかりますね。
出典:ジェイ・フェニックス・リサーチ株式会社 『事業環境激動時代の中期経営計画の基軸づくりの薦め』 P19
コンサル会社であれば、依頼を受けてから一気にPEST分析を実施します。
一方、経営者や経営企画室等に勤務している方の場合は、日々のニュースをPEST分析により整理しておき、いつでも使えるようにしておくのが良いでしょう。
ある経営者は、常にノートを一冊持ち歩いており、見開きのページを使って、左上を「P」の欄、左下を「E」の欄、右上を「S」の欄、右下を「T」の欄と区分しています。
日々のニュースや感じたことを、このノートにメモしているのです。
もちろん、携帯のメモ機能を活用してもOKです。
時間があるときに、整理した情報をみることによって、ビジネスチャンスや脅威を検討できるようにするのがポイントですね!
PEST分析を行っていく上で注意したいのは、ただの「整理」で思考が停止してしまうことです。
本当に重要なのは情報の「整理」ではなく、「分析」して経営に活用することであることは言うまでもありません。
PEST分析で明らかになった実際に起こりつつある事象が、自社の事業にどのような影響を与えるのかを論理的に考える能力を身につけることにあるクセをつける。これにより、本当に分析できたといえます。
たとえば、自社がホテル再生事業に取り組んでいる中で、「高速道路の無料化」という政策の動きをニュースで見たとしましょう。
そこで「ふーん、高速道路無料化かぁ、これはPEST分析でいうと「P」のところだな」というだけでは意味がありません。
PEST分析の真の目的は、下記のような思考を手にすることでしょう。
「高速道路の無料化されるのかぁ」
→「車での移動の活性化されるな」
→「都市部から地方への人の動きが活発になりそうだ」
→「都市部から離れた地方への観光促進が起こるんじゃないだろうか!」
このように外部環境分析から一歩踏み込み、自社のアクションプランの策定までの道筋を見つけることができて、はじめてPEST分析を使いこなすことができたといえるでしょう。
現代は、顧客ニーズの変化、技術革新等、情報の移り変わりが極めて早いといえます。未曾有の変化の時代にあるからこそ、外部環境の分析の重要性はより一層高まっているでしょう。
会社の経営資源をみても、一昔前は「ヒト・モノ・カネ」といわれたものが、現代では「ヒト・モノ・カネ・情報」といわれるようになっています。
情報を持つものが勝ち、情報がないものが負ける世界へと変わっているのです。
こんな時代にだからこそ、PEST分析を活用し、情報整理と分析を行うことで、他社から一歩抜けた経営ができるといえるでしょう。