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働き方改革とは? ヤマトホールディングス、230億の衝撃と挑戦

 

230億円。

 

この莫大な金額が今年、列島を震撼させました。覚えていらっしゃるでしょうか?

 

そう、宅配便最大手であるヤマトホールディングスで判明した未払い賃金の総額です。ヤマトは対象者が約5万9千人にものぼると発表しており、社会に大きな衝撃を与えました。

 

これを期に、ヤマトは「KAIKAKU 2019 for NETX100」と呼ばれる働き方改革を断行すると発表しました。

 

ここでいう働き方改革とは一体どういうもので、ヤマトの取組みはどういった効果を発揮しているのでしょうか?

 

 

生産性向上こそが全ての始まり

 

首相官邸のHPによると、「働き方改革は、一億総活躍社会実現に向けた最大のチャレンジ」とあります。安部内閣肝いりの政策であり、多様な働き方を進めることや、格差の固定化を回避する狙いがあるとされています。

 

背景には、いわゆる「ブラック企業」の増加や人口の減少といった問題、そしてAIのような技術革新の波があるのでしょう。

 

働き方改革は別名「生産性改革」のような側面もあります。

 

生産性とは、働いた時間に対する仕事のアウトプットの量のことです。日本は諸外国と比べ生産性が著しく低いとされています。つまり、「長時間労働をしている割にはそれに見合った成果を出せていない」ということです。

 

長時間労働の常態化こそが日本の国際競争力の低下、ひいては労働者の幸福度を下げている大きな原因であると言えるでしょう。

 

そこに産官連携でメスを入れよう、というのが働き方改革の全貌です。

 

 

ヤマトホールディングスの取り組みとは?

 

ヤマトは下図のように、「KAIKAKU 2019 for NETX100」と呼ばれる働き方改革を実行しており、大きな話題になっています。

 

出典:ヤマトホールディングス プレスリリース『ヤマトグループ、中期経営計画を策定~持続的成長へ。ワークスタイルの再構築と事業・経営構造改革を推進。~』 「添付資料4:「KAIKAKU 2019 for NEXT100」の全体像

 

改革案が3つ掲載されていますが、少し抽象的なので、具体的な取り組みをみていきましょう。

 

まず「配達特化型ドライバーネットワーク」の新設です。これは従来のセールスドライバーのみが行っていた配達業務に加え、夜間配達や宅配ロッカーへの配達に特化した新たな配送網を作り上げることを目的としています。

 

つまるところ、人員を増やして一人当たりの仕事量を下げようというものです。

また、宅配ロッカーの増設といった投資を行うことで、もっとも非効率な配達業務のひとつである再配達の数を減らそうと試みています。これはわれわれ利用者側としてもとてもありがたい取組みですね。

 

そして最新のICTテクノロジーを導入することで、より効率的な配達を実現し、生産性の向上を目指しています。

 

こうした取り組みによってフルタイム社員の労働時間を削減し、働き方そのものを大きく変革しようと試みています。これによりヤマトは急速に「ホワイト化」していると業界内では評判のようですね。

 

さて、人員の増加やロッカー、テクノロジーへの投資は収益性に影響を与えるように思われますが、ヤマトは大口顧客相手に平均15%の値上げを断行することでその源泉を確保しようとしているようです。

 

こちらも大きな話題になりましたが、これも働き方改革の一貫であったのですね。

 

 

ヤマトの働き方改革はなにをもたらすのか?

 

このようにヤマトは働き方改革に本気で取り組んでおり、実際に大きな効果が出ているようです。

 

これから、産業や業界に関わらずぜひこうした動きが活性化すると、きっと社会も良くなることでしょう。

 

しかし、こうしたヤマトの動きは、未払い賃金という問題で社会から叩かれるという経験がなくては、ここまで大きな動きを見せることはなかったのではないでしょうか?

 

働き手が減少し、現場にしわ寄せがいっているとはいえ、大きな変化を嫌う企業がこうした大きな改革を断行できるのでしょうか?

 

生産性を低下させてしまっている、旧来の、きわめて「昭和的」な価値観、空気の支配から、日本企業が逃れることは容易ではありません

 

ヤマトは運良く(といったら怒られてしまうかもしれませんが……)、未払い賃金問題がこうした空気を否応なく吹き飛ばしてくれました。

 

しかしこうした外圧がなく、なんとなく「現状でべつにいいんじゃないかな……」という状況では、日本企業は「ゆでがえる」状態になってしまうでしょう。

 

人間は本質的に変化を嫌い、見たいと欲した現実しか見ることができないものですから。

 

働き方改革を社会全体で押し進めてゆき、労働者の幸福度を向上し、ひいては国際競争力に打ち勝っていく競争力を手にする。

 

そのためには慣れ親しんだ環境を変える勇気と危機感を、経営者がいかに浸透させることができるか、にかかっているのではないでしょうか。