イスラム教を奉ずるアラブ諸国では、伝統的に女性の社会進出が阻まれているといわれます。女性を重視しないという宗教的な価値観がその根底にあるのは間違いないでしょう。
しかし、そうしたアラブ諸国と同じく、もしくはそれ以上に女性の進出が遅れつつある先進国をご存知でしょうか?
そう、世界で第三位の経済大国であるはずの日本です。
2016年に発表された下記の統計によれば、管理職に占める女性の割合はなんと対象国中最下位となっています。
出典:Women in the business 『Grant Thornton International Business Report 2016』
もちろん、一般的に社会に出て働く女性の数は年々増加しています。
しかし女性の管理職比率が低いことは、彼女たちが真に力を発揮する機会が限られており、その力を発揮させるための準備が日本ではまだ整っていないことを伺わせます。
そんな中、「ダイバーシティ(多様性)」という言葉が大きな注目を集めており、女性に限らず多様な人材を活躍させることが企業には求められています。
ダイバーシティ経営とは、「企業が多様な人材を活かし、能力を最大限発揮できる機会を提供することでイノベーションを誘発し、価値創造を実現する経営」とされています。
ではどうしてダイバーシティが急速に注目を集めはじめたのでしょうか?
まず、グローバル化が進展したことで競争が激化し、企業で働く人材一人ひとりの能力を最大限に発揮することが、より一層求められてきたという背景があります。
また、人口の減少に伴う働き手の減少により、労働者を確保することができなくなっているという点も見逃せないでしょう。
そうした企業を取り巻く状況に風穴を開ける「ダイバーシティ」。それを読み解くキーワードは二つ、「人材」と「働き方」です。
出典:Work Style Labo『“ダイバーシティ”が企業にもたらす効果、ダイバーシティ経営の本質とは?』
まずは「人材」です。女性、男性、国籍、学歴、出身地域といった目に見える側面だけでなく、地域、価値観、育ち、興味、キャリアプランといった目に見えない側面を持ち、人材発掘をしていくことが重要です。
次に「働き方」です。「9時-17時にしっかりと出社する」という伝統的な労働形態のみならず、リモートワークや、フリーランスの活用といった、多様な働き方を促進していく必要があります。
様々な人材を登用し、多様な働き方を許容する……。そうした取り組みを、ぜひ経営計画に盛り込んでみましょう。
その第一歩として、まず自社がおかれた状況を整理してみると良いでしょう。
例えば、人材採用の場面を想定してみます。
人事部が提出してくる新卒のペルソナはこんなふうになっていないでしょうか?
「いい大学をストレートで出て、黒髪で切りそろえ、コミュニケーション能力に長けている」
また転職者はこんなひとばかりが面接にやってきます。
「同じ業界出身で、人脈があり、やはりコミュニケーション能力に長けている」
そうした一般的に広く受け入れられているような価値判断に当てはめて人材を集めようとはしていないでしょうか?
ダイバーシティ経営を推進するには、むしろそうした態度を嫌い、むしろ異質であるひとをいれる勇気が必要であるといえます。
もちろんそのように多様性を求めた結果、摩擦も間違いなく生まれるでしょう。
しかし、同質の人材同士の馴れ合い所帯で摩擦すら生まれないということこそが、経営におけるリスクとなる時代になってきています。
多様な視点を戦わせることからこそ、今までにない革新的なアイデアが生まれ、それが企業の競争優位になる。それこそがダイバーシティ経営の根底にあります。
このように、覚悟を持ち、徹底的なダイバーシティを盛り込んだ経営計画の立案、そして実行力こそが求められています。
とはいうもの、ダイバーシティ経営にどのように手を付けていいのかわからないということもあるでしょう。
そのような時には、ぜひ経済産業省が毎年公表する、「平成28年度 新・ダイバーシティー経営企業100選 ベストプラクティス集」をぜひ参考にしてみましょう。
出典:経済産業省『平成28年度 新・ダイバーシティー経営企業100選 ベストプラクティス集』
ここにはダイバーシティ経営を見事に推進している企業が「人材戦略ベストプラクティス集」としてまとめられています。
大企業だけではなく、中小企業等も取り上げられており、また「人材」、「働き方」両面での活用方法を参考にすることができます。
ぜひ、経営計画にダイバーシティ経営を盛り込む際の参考にしてみてください。