新型iPhoneの発売で大きな盛り上がりを見せているスマホ市場。
世界で大きなシェアを握っているのはアメリカのアップル社、韓国のサムスン社、そして中国の新興企業群です。かつて家電で世界を席巻した日本企業の存在感がほとんどないというのもとても寂しいものですね。
日本のメーカーはソニーや京セラといった一部の企業を除いてほぼ全社が撤退してしまっています。
パナソニックは2013年に携帯電話事業から撤退、その経営資源をB to B事業などに振り分けています。
このように展開している事業の撤退や、限られた経営資源の分配などはどのように意思決定されているのでしょうか?
今回はそうした意思決定に役立つフレームワークとして、PPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)という手法を解説します。
PPMとはボストンコンサルティンググループの創り出したフレームワークです。
グラフの縦軸に「市場の成長率」を、横軸に「市場占有率(マーケットシェア)」を取り、自社の展開する事業を配置する手法です。
さっそくですが、具体例としてパナソニックの2010年時点でのPPMを見てみましょう。
各事業をそれぞれ配置できていることがわかりますね。
出典:沼上他(2012)『戦略分析ケースブック』東洋経済新報社p.162-163
配置ができたら次は分析です。
PPMでは、市場成長率が高いか低いか、市場占有率が高いか低いかによって、グラフを4つの象限に分類し、分析します。
パナソニックの各事業を上図の分析手法で考えると、以下のようになるでしょうか。
問題児:
液晶テレビ事業は、液晶テレビの普及とともに高い成長率を保つ一方、市場シェアはシャープやソニーの後塵を拝していました。このことから、液晶テレビ事業は「問題児」にあたります。
花形:
DVD・ブルーレイも薄型テレビ同様、高い成長性を見せていました。それでいてこの事業ではパナソニックは高いシェアを誇っています。このことから、この事業は「花形」に位置付けられます。
金のなる木:
2010年時点ではリチウム電池市場の成長率は低いものの、パナソニックは大きなシェアを誇っています。そのことから、リチウム電池事業は「金のなる木」に分類されます。
負け犬:
冒頭にもあったように、携帯電話事業は成長が鈍化する中で、日本企業は大きく出遅れてきました。そのため、携帯電話事業は「負け犬」に分類されていました。
このように市場の成長性とマーケットシェアを基に事業を分類した後、それぞれの経営資源の分配やその後の戦略の基本方針を立てていきます。
問題児:
マーケットシェアが低くとも市場成長率が高い事業は、シェアを高めて「花形」することを目標にします。そのため、経営資源をこの問題児の事業に積極的に集めていくことになります。
花形:
マーケットシェアが高く、また市場成長率も高い市場に属する事業は、シェアを維持するための競争(投資)が必要になります。そのため、この「花形」事業にも経営資源を多く割く必要があるでしょう。
金のなる木:
マーケットシェアが高く、市場成長率が低い事業は、将来的な投資が必要ないため、多くのキャッシュを生み出す源泉となります。そのため、ここで稼いだキャッシュを「花形」や「問題児」に振り分けます。
負け犬:
マーケットシェアが低く、また市場成長率も低い事業です。この事業は撤退もしくは売却します。
こうした分類は、実際のパナソニックのその後の経営にも反映されています。
実際に、2010年時点でPPMにおいて「負け犬」に分類された携帯電話事業から、2013年に撤退しているのです。
このように、PPM理論を活用することで、自社が営む事業ごとの経営資源の分配方法や戦略方針の策定に役立たせることができます。
撤退や投資の判断を誤らないためにも、ぜひPPM理論を活用してみてくださいね!