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武器は既存の経営資源? ウォルマートの新オンライン戦略

 

売上高世界一の王者、ウォルマート

 

アマゾンやアップル、そしてグーグルなど、テクノロジー企業が世界の耳目を集める昨今。彼らは莫大な売上高と利益を計上しています。

 

アップルは世界の利益率ランキングで首位に、グーグルの持株会社であるアルファベットは第5位にランクインしています。

 

出典:iPhone Media 『Apple、「Fortune 500」で世界一利益の高い企業に

 

 

そんな中、世界の売上高ランキングに目を転じてみると、アップルの2倍もの売上高を誇る企業が君臨しています。

 

そう、小売業の王者であるウォルマートです。

 

約52兆円(1ドル=108円として計算。以下同)もの売上高を誇る、正真正銘の超巨大企業です。

 

iPhone Media 『Apple、「Fortune 500」で世界一利益の高い企業に

 

 

そんな巨人を背中から猛烈の追い上げる企業、それがアマゾンです。

 

アマゾンはオンラインストアとして破竹の勢いで世界中の小売業者をなぎ倒しながら拡大を続けています。

 

小売業の頂点に君臨するウォルマートもその脅威に晒されてきており、一時は完全に飲み込まれてしまうのではないかとの憶測もありました。

 

 

しかしここにきてウォルマートは自社のオンラインストアを、なんと年間44%もの勢いで成長させています。

 

現時点でオンラインストアはアメリカ限定でのサービスではありますが、両者のお膝元での勝負は新しい段階に入ろうとしています。

 

ウォルマートの新時代の経営計画を担う、オンラインストア戦略とはどのようなものなのでしょうか。

 

 

アマゾンだけじゃない! 豊富な品揃えと即日配送

 

ECサイトの競争力、その源泉として必須なものは、品揃えの豊富さと配送の速さでしょう。

 

ウォルマートのライバルであるアマゾンは商品数が2億点を超えるとも言われており、その領域は家電や雑貨、書籍のみならずオフィス用品や生鮮食品にまで及んでいます。

 

それに対し2017年の時点でウォルマートの取り扱い総数は5000万点。アマゾンには届かないものの、十分豊富な品揃えであるといえます。

 

2018年時点での取り扱い点数はまだ公開されていませんが、アニュアルレポートではこの一年でさらに倍増していると言及されており、商品群のカバー範囲はより一層拡大していることは間違いありません。

 

 

またアマゾンの強みとして挙げられるのが、プライム会員の特典である即日配送(米国内では2日)です。

 

ウォルマートは、配車サービスの「Uber」や「Lyft」と連携したり、食材キットの即日配送サービスを手掛けるパーソル社を買収することによって即日配送(一部地域)を実現。200万点がその対象となっており、利便性がより一層高まっているようです。

 

このようにアマゾンの強みとなっている、「品揃え」と「スピード配送」という土俵での均衡をまず狙っていることが見て取れますね。

 

そうした中でウォルマートの取っている戦略として特筆すべきは、リアル店舗を活用したeコマース、つまりオムニチャネル戦略です。

 

 

強みを活かした店舗受け取りサービス

 

世界中でeコマース市場がかなりの勢いで拡大しているのは確かではありますが、アメリカの小売業においては、未だにリアル店舗での売上の方が圧倒的に多いという現状があります。

 

出典:米商務省、単位は10億ドル

 

ウォルマートのアメリカにおける人口カバー率は非常に高く、総人口の90%がウォルマートの店舗から約16km、つまり車で15分ほどの距離に住んでいるといいます。

 

ウォルマートはリアル店舗の王者として、その豊富な経営資源を活かしてオンラインストアの利便性をさらに高める戦略を取っています。

具体的には、オンラインストアで購入された商品を、リアル店舗で受け取ることができるサービスです。

 

ここまではよくある「オムニチャネル戦略」ですが、特筆すべきは「ピックアップディスカウント」という仕組みです。

 

これは顧客がオンラインで注文した商品を店舗で受け取ることで、本来かかったであろう輸送費分を割引するというサービスで、日本のように配送網が高度に整備されていないアメリカの特性をよく活かしていると言えます。

 

ウォルマートの店舗面積は非常に広大で、その中を巨大なショッピングカートを押しながら歩き、一週間分の食料品を購入するというのがアメリカの一般的な家庭の買い物風景です。

 

その「歩き回り、大きなカートを押して買い物をする」という当たり前の消費活動をなくし、新しい体験でより便利にしようという試みであるのは間違いありません。

 

さらに、店舗まで商品を受け取りに来た顧客の「ついで買い」を誘発することで客単価を向上させ、収益性アップを図っているのです。

 

出典:WMT-2018_Annual-Report.pdf

 

全米に張り巡らされた巨大な店舗に、購買力。そして高度に合理化されたサプライチェーン。

 

ウォルマートはそうした経営資源を最大限に活用するだけでなく、オンラインストア領域で名を上げてきたJET社を約3,000億円かけて買収するなど、最強の挑戦者であるアマゾンを迎え撃とうとしています。

 

一方のアマゾンもホールフーズの買収やレジのない店舗「Amazon GO」といった新サービスを引っさげ、リアル店舗の展開も加速させています。

 

 

より激化する小売業界での地殻変動。その中心で鍔迫り合いを続ける両者の新しい取り組みから目が離せませんね!