会社を起業しようとした時に、まず始めに考えることは何だと思いますか?
会社の屋号、資本金、事業展開の方法、営業先をどこに絞るか、メインバンクはどこにするか・・・。
本当に考えなくてはいけないことが無数にありますが、私の場合は「どうやって足りないお金を捻出しようか・・・」ということでした。
私が起業したのは、忘れもしない東日本大震災の年、2011年の春。
すでに、当時役員を務めていた会社には将来日付での辞任届を預け、独立を決めていました。不安を感じながらも軽い興奮を感じる日々を過ごしている時に、あの未曾有の大災害が発生したのです。
誰にとっても、あの時の日本の混乱ぶりは記憶に新しいことでしょう。
私自身は、当時大阪で仕事をしていたため、震災による直接の被害を受けたわけではありませんでした。
しかしながら、取り引きのあった会社や法律事務所などに、退職の挨拶回りをするため東京へと足を運んだ時―――震災から1ヶ月ほど経ったころだったでしょうか。
品川駅の新幹線駅舎から在来線駅舎に繋がる連絡通路では、3本に1本くらいしか電気が点灯されていない節電営業がなされており、ここは本当に品川駅なのか……工事中のどこかの新駅に間違って降りてしまったのではないかと、その薄暗さに世相の暗さを感じ取ったことをよく覚えています。
そんな日本中が非常に厳しい環境のなかで兎にも角にも法人登記を済ませ、曲がりなりにも「社長様」になったわけですが、先述のようにその頭にあるのは、
「足りないお金をどうするか・・・」
ばかりでした。
会社を立ち上げる時は当然、事業計画や経営計画を立てます。
経営計画だけでなく、予想損益計算書や貸借対照表。
それに伴う資金計画書やキャッシュフロー計算書ももちろん精緻に計画して、独立を決めました。
それでも、設備投資資金がどうしても大きく上方に振れること。
売上計画を下方修正せざるを得ないこと。
事業の立ち上がりが遅くなるのは確実なこと。
そのような事情を考えると、どうしても、あと500万円はどこからか融通しなければ、半年以内に事業が立ち行かなくなる見通しになっていたのです。
まずは自己資金だけで起業に目鼻をつけようとしていた私はいきなりの「想定外」に遭遇してしまったわけですが、それが会社経営というもの。ここで足を止めるわけにはいきません。
そこでまず始めに考えたのは、日本政策金融公庫に融資の申し入れを行おう、ということです。
日本政策金融公庫とは、起業を考えている経営者に比較的簡単に必要資金を融資してくれる、という建前の組織です。少し古い世代の人には「国金」、すなわち国民生活金融公庫と言ったほうが伝わりやすいかもしれないですね。
ここで少しだけ私自身の話をすると、それまでにいくつかの中堅・中小企業でCFO(最高財務責任者)を歴任し、数十億円単位の銀行借り入れや第三者割当増資などで資金調達を繰り返し主導してきました。
もちろん、そのために事業計画を立て、地銀はもちろん大手都銀担当者との折衝にも慣れており、信頼性の高い資金計画表を準備して、それに沿った返済も行ってきたキャリアも持っています。
なおかつ、大手証券会社出身ということもあり、世の中で100人の経営者がいれば、上位1%に入るのは確実であろうという金融リテラシーの持ち主であると自負していました。
そして億単位の第三者割当増資を成功させたということは、それだけ説得力がある事業計画を立案し、その実現のための行動計画などでも説得力があったということの裏返しであり、この分野でもプロを自認していました。
しかしそんな私でも、実際に独立をしてみると、それまでの経験が全く通用しない事態に何回も直面することになりました。
結論から言うと、「比較的簡単に融資しくれる」はずの日本政策金融公庫の融資すら、非常な苦戦で幕を開けたのですが、それも含めて、いま思えばすべてにおいて計画性が足りなかったのです。
CFOというポジションを歴任し、経営者、とりわけ資金調達に関しては十二分な知識と経験があった私がなぜ、そんな小規模融資からいきなり躓くことになったのか……。
そんな体験を通して、これから起業をしようとする人、これから日本政策金融公庫でお金を借りようと事業計画をたてることを考えている人。
そんな方々に、少しでもお役に立てればという思いで、筆を執りました。
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【ストーリー】起業者必読!! 500万円の創業融資失敗談と金融機関との付き合い方
はじめから記事を読む場合はこちら第1話 【ストーリー】起業者必読!! 500万円の創業融資失敗談と金融機関との付き合い方
第2話 思わぬトラップ、法人口座が作れない!
第3話 続く独立の厳しさ。一難去ってまた一難
第4話 リベンジを強く心に誓う
第5話 なぜお金を借りられなかったのか
第6話 日本政策金融公庫からの創業融資を獲得
第7話 計画的に銀行と仲良くなろう
第8話 与信を上手に積み上げる方法
第9話 【さいごに】結局のところ、大事なのは事業計画とそれを実現する強い意志