【ストーリー】起業者必読!!　500万円の創業融資失敗談と金融機関との付き合い方　第４話

日本政策金融公庫を訪問してから２週間後くらいでしょうか、オフィスに１枚の封筒が届きました。

差出人は日本政策金融公庫。

ペラペラの紙が入っているだけの、あからさまに嫌な予感しかしない封書ですが、まさか500万円程度の融資が断られることなどないだろう……。

そう思いながら封を切ると、出てきたのはB4用紙の紙切れ一枚。

内容は「今回は融資をお見送りさせていただきます。貴殿の事業がうまく進むことをお祈りしています。」

必要な資金を貸さずに「うまく進むことを願う」という、ある意味で挑発的とも思える内容に一瞬怒りが湧きましたが、しかしすぐに体から力が抜けるのを感じ、私は無力感と脱力感に沈みました。

「全然金足りねえわ……」

そうつぶやくと、悔しさで目頭が熱くなるのを感じたが、へたり込んで日が沈むのを待っていれば、それだけ現預金が溶けるのを、つまりデッドエンドが来るのを文字通り座して待つだけです。

私はそのB4用紙をビリビリに引き裂いて丸めて踏んで蹴飛ばすと、

「覚えていろよ、絶対に1年以内に『借りて下さい』と言わせてやるからな……」

と、八つ当たりをした紙を相手につぶやくと、すぐに事業計画の見直しに着手しました。

全体的に設備投資を切り詰め、先送りできるものは先送りし、支払い条件を変えられそうなところを一つ一つあたる。

事業の立ち上げ規模を、不本意ではあるが大幅に縮小するなど、できうる限りの事業計画の再編を行った上で、それでどれだけの売上げを見込めるのか、そしてキャッシュが入ってくる計画になるのか。

資金計画やキャッシュフロー計画も全て引き直し、自分の立ち位置を正確に再認識する作業を進めました。

それでもまだ、何をどうしてもあと200万円足りないという結果になりました。

この200万円とは、自分の資産の中でもう切れるものはないというところまで着手をした上で、まだそれでも足りないという数字です。

当然、生命保険は全て解約。

僅かでも解約返戻金のあるものは解約の上で運転資金に組み込み、また自身の生活もギリギリまで切り詰めて給与を徹底的に詰めました。

さらに子供の教育のために積み立てていた学資保険も解約するなど、もはや行くところまで行った上でそれでもまだ不足している200万円。

たった200万円ですが、もうどうしようもなく大きく見える200万円でした。

この時私はやむなく、ある意味で最後の手段に出ました。

それは、親兄弟、親戚への借金の申し入れ。もうそれしか方法はない。

正直、この金策は本当に辛いものでした。

独立直後に何が一番つらかったかと聞かれれば、この時に親戚筋や親兄弟に金策で頭を下げて回ったことだと迷わずに答えるでしょう。

辛かったのは自分自身の情けなさに対してではなく、金策を申し入れられた親戚のおじさんやおばさんが見せる複雑な表情と、何よりもそれを申し訳なさそうに言葉を選んで断る時の表情。

そんな思いを、私の事業とは何の関係も無い親戚筋の皆さんにさせてしまったことに対してです。

なかには、

「そんなことをしていないで真面目に働きなさい！」

と説教をするおじさんがいるかと思えば、

「悪いけど、これで帰ってくれるか。もしもう一度来ることがあれば、もう親戚として付き合いができない」

と、10万円を包んでくれたおじさんもいました。

結局その10万円は、とても受け取ることができませんでした。

そんな金策を繰り返して、ようやく200万円を借りることができました。

おかしな言い方かもしれませんが、私がこの後、なんとかして事業を軌道に乗せることができたのは、正直、この時の思いがとても大きかったです。

ひとつは、日本政策金融公庫に絶対にリベンジしてやるという悔しい気持ち。

もうひとつが、ここまでしてお金を借り、また貸してくれた親戚筋の人に対し、絶対に貸し倒れをさせる訳にはいかない、必ず色を付けて返すんだという強い思い。

そんな悔しさとありがたさが入り混じった感情にも押され、私は鬼気迫る勢いで、事業の立ち上げを進めていきました。

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【ストーリー】起業者必読!!　500万円の創業融資失敗談と金融機関との付き合い方
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第１話 【ストーリー】起業者必読!!　500万円の創業融資失敗談と金融機関との付き合い方
第２話 思わぬトラップ、法人口座が作れない！
第３話 続く独立の厳しさ。一難去ってまた一難
第４話 リベンジを強く心に誓う
第５話 なぜお金を借りられなかったのか
第６話 日本政策金融公庫からの創業融資を獲得
第７話 計画的に銀行と仲良くなろう
第８話 与信を上手に積み上げる方法
第９話 【さいごに】結局のところ、大事なのは事業計画とそれを実現する強い意志